空調省エネは「効率が上がった」だけでは終わりません。

本当に大事なのは、kWh(電力量)として削減が"見える"状態まで持っていくこと。

ここでは、実際の現場で「どこが損失だったのか」「なぜ効きにくいのか」「どう設計し直したか」を、事例として紹介します。

共通の進め方

成立する省エネ

(=kWh削減が確認できる省エネ)に絞って、最短ルートで改善する


このページの見方(先に結論)

同じ「省エネ商材」を入れても、現場の損失構造が違えば結果は変わります。

だから空調省エネ.comでは、次の順番を重視します。

事例1:スーパーマーケット

「COPは上がった。でもkWhが目立たない」問題を解剖

概要

冷媒改善(R-Oneo)により、機器単体のCOPは3〜20%上昇が観測されました。

一方で、店舗全体の電力量削減が限定的に見える——このギャップを「運用変更なし」の前提で科学的に分析しています。

可視化でやったこと
  • COMP.COP試験
  • サーモカメラによる熱ロス診断
  • 年間電力構成の分析

損失要因の確定(結論)

COP改善分(W側の改善)が、負荷Q(熱負荷)に吸収されている構造です。

「Wが改善しても、Qが大きいままだとCOP改善分は吸収される」ことを、式(COP=Q/W)で整理しています。

さらに、制御ロジックの「最低運転時間」等で、COP改善=稼働時間短縮にならないことも指摘しています。

改善設計(次の一手)

この事例の示唆は明快で、"負荷Q側を下げる対策"が入って初めて、COP改善がkWh削減として現れるということです。

事例2:商業施設(館内VRV)

「更新 vs 延命+省エネ支援機器」投資判断を3パターンで整理

概要(現状)

ダイキンVRV(室外機10台・室内機37台、2004年導入・約20年経過)

年間コスト:総電気代 約3,000万円/うち空調分 約1,200万円(40%)

損失要因の確定(課題設定)

効率低下・メンテ費増・突発停止リスク拡大。

→ 「更新一択」ではなく、データ基盤を作りながら延命で回収するルートも成立する、という整理。

改善設計(3つの投資シナリオ)

実務的に強い「段階導入」

事例3:鉄道駅・駅ビル

「35台基準」で制御方式を切り替え、ROIを守る設計

目的(最初に明文化)

診断→改善→制御→検証→運用定着のプロセスで、既存設備のまま空調電力を20〜45%削減し、投資回収は原則3年以内

可視化(診断の中身)

改善前後で AI×サーモ を実施し、温度分布・気流推定・機器状態推定などから優先順位を出す設計。

損失要因の確定 → 改善設計(35台基準)

室内機台数で制御の打ち手を分けます:

35台未満

Sensibo方式(台数比例型)

35台以上

E&E Air方式(拠点固定型)+必要箇所Sensibo

この「分岐」を入れることで、規模に応じた投資になり、ROIを守りやすい。さらに、構成要素も整理されていて

効果目安とPoC位置づけ

  • 省エネ率:20〜45%(PoC保証ライン15%)
  • 回収期間:原則3年以内/補助金利用時1.0〜1.5年

事例4:工場

「構造・設備・運用」に分けて、改善策を迷子にしない

現状把握(なぜ負荷が大きいか)

広い空間・広い開口部、季節の熱分布や気流の影響で、空調負荷が大きくなる傾向——という前提を置いて、

改善策を検討しています。

損失要因の確定(整理の仕方)

空調効率改善の代表的方法を 1)構造面 2)設備面 3)運用面 の3つに分けると整理しやすい、というフレーム。

改善設計(対策×効果×費用の見える化)

例として、以下のように「効果」と「費用感」を並べています:

事例5:食品卸業

冷凍・冷蔵設備+事務所空調の統合省エネ

現状

  • 庫内温度:6〜8℃で安定(サーモ診断と紙記録で整合確認)
  • 外気侵入:出入口・扉下・梁・照明部に集中(主要ロス要因)
  • 設備健全性:概ね健全。ただし冷媒劣化が想定されるため、制御最適化・熱交換改善が有効
  • 事務所空調:現調時 24〜26℃で安定。一方で夏季・冬季は機械任せ運転となり、稼働ロスが出やすい

提案内容(統合パッケージ)

  • 施策①:制御最適化(空調) SENSIBO with HEEM(10台) 在室・外気条件を踏まえた運転最適化により、ムダ運転を削減。
  • 施策②:見える化(回路別電力) EMPORIA VUE3 with HEEM(2台) 回路別の電力データでロスを特定し、HEEMの効果検証(改善前後比較)を高精度化。
  • 施策③:制御最適化(冷凍・冷蔵) エコパルサー(2台) 圧縮機サイクルを最適化し、冷媒劣化への対策として循環効率を改善。
  • 施策④:熱交換性能回復+外気侵入対策 金属修復材(熱交換器):6台分(伝熱面をオーバーホールし効率を底上げ) 外気侵入対策:二重カーテン/扉下ブラシ/梁・照明周りの断熱補強(外気侵入を抑制)

内訳:

  • SENSIBO with HEEM:10台
  • EMPORIA VUE3 with HEEM:2台
  • エコパルサー本体:2台
  • 取付工事費:150,000円
  • 金属修復材(熱交換器):6台
  • 断熱・気密改善:一式

※既設設備に対して容易に取り付け・付け替えが可能で、設備更新は不要。

想定効果(年間・試算)

年間電気代:900万円 → 年間削減:162万円(約18%)

投資回収(見込み)

  • 回収年数:1.8年(約1年9ヶ月)
  • 初期投資:2,900,000円(税別)
  • 年間削減:162万円(固定値で算定)

実施ステップ(目安)

  • 現場調査(1日)
  • 主要設備の実装(1〜2日):エコパルサー2台+金属修復材
  • 制御システム配備(1日):SENSIBO with HEEM + EMPORIA VUE3 with HEEM
  • 外気対策施工(半日〜1日)
  • 効果検証(1〜3ヶ月):改善前後比較・運用最適化

事例から見える「共通パターン」

次に何をしますか?