空調の省エネとは | 空調省エネ.com

外乱が多いから、
空調省エネは難しい。

でも、順番が分かれば進みます。

空調省エネは「機器だけ」を見ても決まりません。外乱を理解し、可視化 → エネルギー損失要因の確定 → 改善設計の順で進めると、快適性を守りながらムダを減らせます。サーモ画像やAI分析なども活用して、"根拠ある省エネ"へ。
Understanding Energy Loss

まず、空調の省エネは
「外乱」から考えます

空調の省エネとは、我慢して室温を上げ下げすることだけではありません。本質は、必要な場所に、必要な量の冷熱(または温熱)を、必要なタイミングで届けることで、ムダな運転を減らしながら快適性も守る取り組みです。


まずは「外乱」を知る

空調の電気代は、同じ建物・同じ機器でも日によって大きく変わります。その最大の理由が、空調がいつも受けている外乱(外からの影響)です。

暑さ・湿度・日射、ドアの開閉、人の出入り、厨房の熱、換気量の変化、冷凍冷蔵設備との干渉……。空調はこうした外乱に合わせて働き方を変えるため、ムダが出たり、効きが悪くなったりします。
(自動車で言えば、向かい風・上り坂・渋滞・荷物の重さが変わると燃費が変わるのと同じです。)

だからこそ最初にやるべきことは、対策を急ぐ前に、現状を可視化・数値化して、どの外乱が効いているのかを整理することです。現状が見えると、手を付ける順番(優先順位)がはっきりします。

外乱は「複数の領域にまたがる」──それがややこしさの正体

空調の外乱は、ひとつの原因にまとまりません。気象(外気)だけでなく、建物(断熱・すきま)、人の動き(出入り・人数)、換気(外気導入)、内部発熱(厨房・機械・照明)、気流(温度ムラ)、計測・制御(センサー位置)、機器状態(汚れ・劣化)にもまたがっています。

Energy Loss Ratio

空調エネルギー全体における
「損失エネルギー割合」
よくある目安

空調に使われるエネルギーのすべてが"必要な冷熱/温熱"として役立っているわけではありません。外乱や運用、気流ムラ、換気過多などが重なると、同じ快適性を得るために余計なエネルギーが上乗せされます。

ここではそれを「損失(改善余地)」と呼びます。

必要エネルギー
損失
必要エネルギー(本来必要な冷熱/温熱)
損失エネルギー(改善余地)
必要エネルギー
6585%
本来必要な冷熱/温熱
損失エネルギー(改善余地)
1535%
外乱・運用・気流・換気などの影響

「損失」の見方で数字が変わる理由(2つの基準)

空調の損失(改善余地)は、何を基準に"ムダ"とみなすかで数字が変わります。このサイトでは、次の2つの見方を意識して整理します。

Criteria 01 — 機械基準
機械の稼働(エネルギー)基準で見る損失
同じ快適性・同じ運用を前提に、劣化や風量低下、過剰換気、ショートサーキットなどで本来より余計に使っている電力を損失とみなします。
Criteria 02 — 快適性基準
熱源の快適性(体感・品質)基準で見る損失
室温の平均が同じでも、温度ムラ・気流・湿度で快適性は変わります。快適性が崩れると設定温度を下げる/風量を上げる対応が起き、結果として電力が増えます。
COP vs kWh

COPとkWhの違い
スーパーマーケットなどで特に重要

空調の省エネを語るとき COP という数値が出てきます。COPは「効率」ですが、電気代に直結するのは kWh(電力量)です。

電力量(kWh) ≒ 必要な冷熱量(負荷) ÷ COP(効率)

ここで重要なのは、COPだけ見てもkWhは決まらないということです。なぜなら、現場ではCOPと同時に「負荷(必要冷熱量)」も動くからです。特にスーパーマーケットでは、冷気漏れ・気流干渉・デッドスペースが「損失負荷」を大きくしやすく、COPの変動と相殺が起きやすいのが特徴です。

COPが下がってもkWhが「あまり変わらない」ことがある理由

コールドフェンスや風よけなどで冷気漏れが減ると、除湿負荷が下がり、必要冷熱量(負荷)が下がるので本来はkWhは下がる方向に向かいます。

一方、同じ期間に

室外条件が厳しい日が続く
室外機の汚れなどで放熱が悪化する
台数制御や部分負荷運転の影響で効率が落ちる

などでCOPが下がると、「負荷が下がった(kWh↓)」+「COPが下がった(kWh↑)」が相殺し、結果としてkWhが思ったほど下がらない/ほぼ横ばいになることがあります。

また、気流干渉が強い売場では、空調とオープンケースが"喧嘩"して乱流が増え、ケース側負荷や湿度処理負荷が上がり、総負荷が膨らむことがあります。これを抑えて「損失負荷」を減らしても、同時にCOPが落ちれば、kWhは横ばいに見えます。

さらにデッドスペースが多い現場では、暑い場所を埋めるために設定温度を下げる/風量を上げる/運転時間を伸ばす対応が起きやすく、負荷側のブレが大きくなって、kWhの変化が読みづらくなることもあります。

だから結論

kWhを下げるには「COPを良くする」だけでなく、まずは冷気漏れ・干渉・デッドスペースなどの"損失負荷"を見える化して減らすことが近道です。

Loss Breakdown

空調の損失内訳
損失部分の中身・よくある目安

損失エネルギー(15〜35%)の中身が、どの要因にどれくらい分かれるかの目安です。
総空調エネルギー × 損失割合 × 要因割合 = 要因別の損失目安

パターンA|一般的な店舗・オフィス
パターンB|食品小売(冷凍冷蔵設備あり)
一般的な店舗・オフィスで多い損失内訳(目安)
外気侵入・換気の過多
25%
日射・外皮(窓/屋根/断熱)
20%
内部発熱(厨房/機械/照明/人)
15%
気流ムラ・ショートサーキット
15%
制御・運用(設定/スケジュール)
15%
機器劣化・メンテ不足(風量低下等)
10%
食品小売(オープンケース等で干渉が起きやすい)目安
冷凍冷蔵設備との干渉・冷気漏れ/放熱
25%
外気侵入・換気の過多
20%
日射・外皮
15%
気流ムラ・乱流(空調×ケース)
15%
制御・運用
15%
機器劣化・メンテ不足
10%
使い方のコツ
01

いちばん大きい要因から手を付けると、少ない施策でも効きやすい。

02

ただし"感覚"で決めず、次の章の可視化で「あなたの現場の割合」を確定する。

03

確定したら、改善設計(順番と組み合わせ)へ進む。

Visualization Steps

現状の確認(可視化・数値化)は
まず「簡単な方法」でOK

外乱が多い空調では、いきなり対策を決めるよりも、先に"いま何が起きているか"を見える化した方が早道です。

1
いつ電気が増えているかを見る(電力)
電力の「日別・時間帯別」を確認(まずはピーク時間をメモでもOK)。営業時間内と外の差、ピーク時間帯が固定かを確認します。
2
暑い/寒い場所がどこかを探す(温度ムラ)
「暑い/寒い」場所を平面図にマーキング(入口・窓際・厨房・奥・レジ)。代表点だけに頼らず、2〜3点で比較します。
3
サーモカメラで"外乱の入口"を見つける(簡単で強い)
サーモカメラ(熱画像)は「どこから熱が入っているか」「どこで冷気が漏れているか」が一目で分かります。
入口・自動ドア|外気侵入、すきま
窓・ガラス|日射
天井・吹き抜け|暖気だまり
厨房・機械室|内部発熱
冷凍冷蔵設備|冷気漏れ、放熱、乱流
4
換気とドア開閉をざっくり把握する(外気負荷)
換気が強い時間帯、ドア開閉が多い時間帯、過剰換気になっていないかを確認します。
5
運用を確認する(ムダ運転の芽を見つける)
設定温度・風量・タイマー(誰がいつどう変える?)。部分稼働なのに全体運転していないか、フィルタ詰まりで風量が落ちていないかを確認します。
Thermo + AI

サーモカメラ × AIで
判断をラクに

解像度や感度、補正機能が良いほど、温度ムラの境目、侵入経路、内部発熱源、冷気漏れなどが見えやすくなります。AI分析で次のような整理ができます。

AI — 01
ホット/コールドスポットの自動抽出
温度ムラの位置・大きさを自動で特定し、優先順位を付けます。
AI — 02
外乱の入り口候補の優先順位化
どこから熱・冷気が侵入しているか、候補を重要度順に整理します。
AI — 03
Before/After差分の可視化
改善前後の変化を画像ベースで明確に比較できます。
AI — 04
対策仮説の整理 + 損失量の簡易試算
温度差×影響範囲から損失量の目安を試算し、優先順位つきで提示します。
Measurement Tips

測り方のコツと
便利な道具

代表点だけに頼らず、苦情点を含め2〜3点で比較する
同じ曜日・同じ時間帯など、条件を揃えて比べる
温度だけでなく湿度も見る(夏は特に重要)

便利な道具(まずは"簡単に見える化"できるものから)

📷サーモカメラ(熱画像)
🌡️温湿度計(複数台)
電力の見える化(回路別が理想)
💨CO₂計(換気の影響を見る)
🌬️気流の簡易チェック

※スマホでの見える化に役立つ製品情報(空調向けIoT/電力モニタリング等)は、「マルシェ(省エネ商品)」の各商品ページでご確認ください(特長・用途・導入イメージを掲載しています)。

Process Flow

空調省エネの進め方

可視化 → 損失要因の確定 → 改善設計の3ステップで進めます。

1
可視化(現状の確認)
電力・温湿度・運用を見える化。いま何が起きているかを把握します。
2
エネルギー損失要因の確定
外乱の中で"効いている原因"を特定。複数の外乱が重なっている場合も、何が主因かを整理します。
3
改善設計
効果の大きい順に、無理のない改善策を組み立てます。必要に応じて小さく検証して確信を持って実装します。
Improvement Examples

外乱別:改善設計例

外乱の種類ごとに、代表的な改善設計の方向性をまとめます。

日射(西日・ガラス)
遮熱+気流到達+ゾーン分け
ドア開閉・搬入口
すきま対策+入口気流設計+運用見直し
高湿度
換気最適化+除湿運転設計+性能回復(清掃)
換気増(CO₂対策)
必要時だけ増やす自動化+給排気バランス+熱回収検討
内部発熱(厨房等)
排熱経路設計+局所排熱+気流分離+発熱源低減
温度ムラ・気流不良
吹出し到達設計+吸込み見直し+レイアウト調整
冷凍冷蔵干渉
冷気漏れ対策+乱流抑制+干渉回避+夜間運用最適化
センサー位置・制御
計測点追加+制御幅/スケジュール設計+運用標準化
Next Step

まずは、今の現場の傾向を
確認してみてください

外乱を理解し、現状を可視化することが省エネの第一歩です。
まずは簡易ロス診断で、現場にどのような損失が潜んでいるかを確認してみてください。

HEEMで進める 詳しく相談する 簡易ロス診断をはじめる